裏の家の名前おねえさんと出掛けてみた

夏休み!相棒との休日!しかし生憎の雨――――――――

「てなわけで、今日は雨の日のお出かけにもぴったり☆八十稲羽の新スポット、ジュネスにきていま~す・・・って  なんでだよ!!なんで休日まで自分のバイト先にいなきゃなんねえんだよ!!?
「ここなら雨に濡れないで買い物も食事もできるし。帰りに夕飯の食材も買って帰るから、な?」
「へいへい、毎度ありがとうございま~・・・・・って・・・おい、相棒、あれって・・・・」
「あれって・・・・あ、あれは・・・・っ」



「完ちゃん、どっちのキャベツがいいと思う?」
「右の。中の詰まり具合がそっちのがいい」
「あ、豚肉も安くなってる~。完ちゃん、今晩は何が食べたい?」
「中華か和食かな・・・・そういう名前はなんかねーのか?」
「うーん、どっちかっていうと油こってりの中華かなっ」
「油言うな・・・・じゃあそれ系で」

スーパーの食材売り場で和気あいあいと買い物をする男女。それ自体に何も問題はない、問題は片割れの男が自分たちもよく知っている後輩だというところで―――――!

「~~~おぃおぃ、知ってたか相棒・・・!?あの完二に、あ の 完 二 に !!晩飯の献立の相談をするような女子がいるなんて・・・・・っ!?」
「いや、これは結構・・・驚いてる・・・・・」

生鮮売り場の角からこっそり様子を窺っている高校生の後姿は実に怪しい。それは自覚している。 でも、それより怪しいのは、完二とあの超美人な女子の関係だ!完二!その子いったいどちら様!?
俺より完二が懐いてるであろう相棒も、本人とそんな話をしたことはなかったようで、 俺と同様に驚きを隠せないで二人を食い入るように見つめている。

「よーし、大漁大漁!」
「つーか買いすぎだろ、これ」
「完ちゃん育ち盛りだし!おばさんに台所を預かった身としては、張り切って作らないとねっ」

しかもあの二人、なんつーか話してる内容が学生のお付き合いレベルじゃなくて、 妙に所帯じみてるっつーか、こ・・・恋人っつーか・・・・
「まるで一緒に住んでるかのような会話だな。」
「そう!それだよ相棒!!」
女は怖いとか言いつつ、ちゃっかりてめぇにはそんな関係の女がいたのか? 俺なんて未だキッスもあっちも未経験だというのに、後輩のお前はもうそんな高みまで昇っていたというのか?? やだもう羨ましい、超絶羨ましい。

「完ちゃん、帰りのバスが来るまでフードコートで一休みしようよ。私、ソフトクリーム食べたいな~」
「あー、別にいいけど・・・ここ先輩ん家の店なんだよな・・・今日、働いてっかも・・・・」
「おやおや、私との2ショットを見られると都合が悪いですか~?」
「ばっ、別にそんなんじゃねーよ!おら!行くならとっとと行くぞ!」

完二ぃ・・・・俺、休みだけど見ちゃったわ、お前の青春っぷり・・・・・
もうね、眩しすぎて見えない。なんなの、そんなかわいい子連れちゃって。
あーぁ、もうしんみりしてきちゃったぜ俺。そろそろこの場を立ち去るか、と思った瞬間、悠が口を開いた。
「陽介、あの二人フードコートに行くって言ってたな?あそこには確か・・・・」
「あ?・・・・・あ!!!」
ニヤリ、笑う男子高校生ふたり。場所が悪かったな、完二。ここはこの俺、花村陽介の庭だぜ!
「庭っていうか、もはや家だよな」
「悠、そこはあれ、そんな優しい笑顔で突っ込まなくていいから・・・・」





「ソフトクリーム一つと、メロンソーダお一つですね。お席までお持ちしますので、こちらの番号札を持ってお待ちくださーい」

昼時も過ぎて席に余裕のあるフードコート。俺と名前は少し広めの席に座らせてもらった。
「ふー、帰りは雨が止んでるといいんだけどね~」
「まったく、こんな買い込みやがって・・・大体、今日の晩飯は決めたのかよ?」
「おっ、よくぞ聞いてくれました~。今夜の夕飯は~・・・」

『クマはビフテキがいいクマ――――――――!!!』


何が起きたのか一瞬わからなかった。が、しかし、この聞き覚えのありすぎる声に、反応しないわけがねぇ・・・!
「てっ、てめえどっから涌いてきやがった!!!?つーか何してんだクマ!」
「勤労意欲の高いクマは、完二がこうして遊びほうけてる日だって働いているクマよ!さ、お嬢さん、ソフトクリーム、お待たせしましたクマ・・・!(キラッ)」
「わぁい、ありがとうございます♪って、えっと、こちらはお友達?」
「い、いや、友達っつーかなんつーか・・・・」

『おっと完二、背中がガラ空きだぜ?』 ストン 「ちょっ、花村先輩!?」
『すみません、お隣、失礼します。』  ストン 「あ、はい、どうぞどうぞ?」「なっ、鳴上先輩まで!!?」

な、なんじゃこりゃあああああ囲まれた!瞬時に知り合い3人に囲まれたぞ!!?罠!?これは何かの罠なのか!?
「前門のクマ、後門のセンセイたち・・・ふふ、もう逃げられないクマよ、完二・・・・!」
「そもそも逃げてた覚えがね―――――よ!!!!!!」
「いやぁ、俺たちもたまたまここに来てみたら、お前がこんっっな美女を連れて歩いてるの見かけちゃったからさぁ」
「悪い、完二。俺もちょっと気になって付いてきちゃった」

いや、鳴上先輩、そんな男前なツラで「きちゃった」って可愛らしく言われても・・・・


  「「「で、この女の子は・・・・・・・????????」」」


「ただの幼馴染だ――――――――――――――!!!!!!!」
「あ、初めまして。苗字名前と言います。完二くんのお店の裏に住んでるんです」
俺の叫びを無視し、そして丁寧に頭を下げながら始まる自己紹介。おい名前、お前落ち着きすぎだろ・・・・!

「初めまして、俺は鳴上悠と言います。苗字さんは同じ高校・・・・?」
「いや、大学生なんです私」
「なっ、年上!?す、すんません、つい勘違いしちまって・・・・あ、おっ、おれは花村陽介っていいます!」
「クマはクマだクマ!名前ちゃん超かわいいクマねー!完二といるとまさに美女と野獣クマ!」
「誰が野獣だゴラァ!!!」
「そういうところがまさに野獣っていうか、なー」
「悪いな完二。まあ、こういう場面を見られたら照れるよな」
「てっ、照れてるとかそそsそんなんじゃねーっすからホント・・・・!!!」
鳴上くんに花村くんに熊くんね、なんてニコニコしながら確認する名前を見て、明らかに隣の花村先輩の頬がいつにもまして緩んでいるのが見える。
クマにいたっては、いつの間にか鳴上先輩と名前を挟むように座ってはしゃいでやがるし。
あっ、し、しかもソフトクリーム分けてもらってやがる・・・・!名前、スプーンついてるとは言えお前、それってかかか間接・・・!
幸い、鳴上先輩はさすが、落ち着いてるっつーか安心して見てられるっつーか・・・・・

「あ、鳴上くんも食べる?」
「いや、俺は大丈夫です。それより苗字さん、ここについてますよ、ソフトクリーム」ひょい、ペロ←
「ちょっ、悠!?い、今のは駄目だろ、親密度的に!」
「あっ、すみません。俺、小学生の従姉といつもこんな風にやってるのでつい・・・・」
「あはは、仲いいんだねぇ」
「おま・・・・菜々子ちゃん相手でも色々思うとこあるわ・・・俺・・・」


駄 目 だ こ の 天 然 ぶ り も 油 断 な ら ね え ・・・・!!!!!!


初対面とは思えない打ち解けっぷりで、あっという間に仲良くなった名前と先輩らを目の前に約20分、「バスの時間だぞ!」と名前を引き連れる頃には、完二の見た目にそぐわない繊細で純情なハートは憔悴しきっていた。

「さークマは真面目に労働に戻るクマ!センセイ、ヨースケ、ゆっくりしてくクマ~!」
「頼んだぜクマ吉ー」
「ありがとな、クマ」
盛り上がったのもつかの間、またもや男二人の状態に戻り、ジュネスのBGMが耳につく。大勢のあとってこう、一瞬だけど、ちょっとした寂しさを感じるよな。
「それにしても苗字さん、すっげぇかわいかったな。」
「あぁ、年上って気があんまりしないな。話してみると落ち着いてて先輩って感じはしたけど」
「完二はあんなお姉さんとこの夏、一緒に過ごしてるのか・・・いいなぁ~不公平すぎだろ神様、なんで俺のとこにはクマ吉なんですか・・・!?」
「たしかに、あんな姉はなかなかいないかもな」
悠はそう言って、菜々子ちゃんにむけるようなすっげぇ優しい顔で笑った。
たぶん、俺が思い出してることと同じことを悠も思ってるんだろう。
それはついさっきのこと。

去り際、苗字さんは完二をちょっと待たせて、見送る俺たちのとこに走り寄ってきた。そして、


『二人とも、完二くんと仲良くしてくれてありがとう。これからも、よろしくお願いします。』


そう言って、会った時と同じように丁寧に頭を下げて、手を振りながら帰って行った。あーなんだろ、すっげぇこそばゆい。完二、お前、果報者だなぁ。悠もそういうとこ、たぶん感じ取ったんだろうな。慈愛に満ちた顔で口を開いた。

「完二は完二で、自分は苗字先輩の護衛!って気負いがあるんだろうな。いちいち反応が可愛かったな、ほんと」

あれ、お前もしかして完二で遊んでた?ちょっと遊んでた??男心ってか漢心を弄んでたの、お前??

「ほんと、油断ならないやつだな相棒・・・・・」
「別にわざとじゃない。ただ完二が素直なだけだから」
「ま、あいつは良くも悪くもわかりやすいわな」

あー、俺にも名前お姉さんみたいな癒しをください、神様っ!