How to go 4

俺たちを圧倒していた里中のシャドウが悲鳴をあげて燃え上がり、後には里中の姿に戻ったそれが力なく宙に浮いていた。

「アンタは・・・アタシ・・・・」

恐る恐る近づいた里中が、その姿をしっかり見つめそう呟くと、その人型は眩しい光を放って大槍を構えたペルソナとしての姿に変わり、そして里中の手元へと消えていった。
なんとか勝てた・・・・みたいだな。



「やったな鳴上!・・・って・・・・・!?」
「ちょ、鳴上くん・・・・その子・・・・!?」
俺に駆け寄ってきた花村と里中の動きが止まる。
それもそうだろう、俺にも今、自分がどんな状況にあるのかまったく理解できない。この目の前にいる見知らぬ女子がその理由だ。
唯一、繋がっている右手の感覚に、今更ながらドキッとする。

「きみ、は・・・・?」

混乱する思考からなんとか声を絞り出しそう問いかけてみると、彼女は呆気なく繋がっていた手をするりと放し、

「また・・・・会ったときに」

そう、抑揚のない声で言い残し、この霧の中にその身を溶かし消えてしまった。あまりにも一瞬の出来事で、その消えかかった体に手を伸ばして引き止めることさえできなかった。この至近距離でその消える様を目の当たりにした俺は、ただ呆然とした。しかし、

幻・・・じゃあないな。

右手に残った手の感触に、そう一人ごちる。

「あ――――あのさっ―――――」

その姿を遠巻きに見ていた花村が、意を決したように口を開いた。

「ん?なんだ?」
「あの、鳴上さ、あいつ、知り合い・・・?」
「いや・・・・全然。気が付いたら目の前にいて、何がなんだか・・・・」
「その、・・・ま、真面目な話さ・・・・」
「?花村?あの子のこと、知ってんの!?」
「いや、知らねえっ。俺も全然っ、意味わかんねぇっ!で、でもさ、笑わないで聞いてほしいんだけど・・・」






「あの子、今朝、俺んちにいた・・・・気が、する・・・・」












夕暮れ時のジュネス。
花村はこちらの世界に戻って時間を確認するやいなや、慌ててエプロンをつけてアルバイトに向かった。残った俺と里中は、そんな花村の働く姿を横目で見つつ、フードコートの一卓をかりて一息入れる。
夕飯時にさしかかることもあってか、この外のフードコートにいる客も、もうそんなに多くはない。
シャドウとの一戦で疲れ切った体を恨めしそうにする里中に、また明日、一緒に天城の救出に向かうことを約束し、はやる気持ちを何とか抑えてもらった。
そんな俺に気を遣ったのか、里中は嬉しそうに、天城と出会うきっかけになった愛犬の写真を見せてくれた。
接客が一区切りついたのか、エプロン姿の花村もこのテーブルに駆け寄ってきて、3人、和気あいあいと雑談をしていると、小腹を満たすために買っていた焼きそばが運ばれてきた。

この力のことも天城のこともあの女子のことも、まだまだ俺たちにはわからないことばかりだけれど、今はひとつひとつ、できることから解決していこう、そう前向きに気持ちを切り替えようと思う。



「3番テーブルさん、焼きそばとドリンク、お待たせしました。」
「わーい来た来た〜vv」
「あぁ、どうm・・・」
「おーっす、お疲れさんでs・・・」





なんと運んできたのは、つい先ほどテレビの中で出会ったあの女子だった。
幻のように現れ幻のごとくあっという間に姿を消した、あの非現実的な驚きが再び俺たち3人を襲う。


「先ほどは失礼しました。あらためて、今日からこちらでバイトさせてもらっています、 苗字名前です。」
そんな俺たちの凝視をものともせず、彼女は冷静に自己紹介をする。
またもや呆気にとられた俺たちは、もはや相槌すらうつこともかなわず――――


「どうぞ、こんごともよろしく」
そのクールな表情を崩すことなく深々と下げられた頭に、しばらくの間、俺たちは釘づけだった。