天城雪子が消えた。

天城の一番の友人である里中は、いち早くこの異変を察し気にかけていたが、残念ながら事は起こってしまったようだ。
マヨナカテレビに映るドレス姿の天城はいったいなんなのか。クマの言う『本当の犯人』というやつが、天城をテレビへ入れたのだろうか。
いったい、何の目的で?
俺たちがわかっていることは、初めてテレビに入った時からほとんど増えてはいない。
そのことが怖くないといえば嘘になるし、里中の不安な気持ちもよくわかる。
そんな里中が、あんなにテレビの中を怖がっていた里中が、その親友の為に俺たちについてきた。
ペルソナを持たず、その身一つで先頭をきって天城を探す姿は、まさに必死そのものだ。
・・・・・・俺にも・・・・・・・

俺の家が転勤族じゃなくて、俺自身がもっと積極的に人と関われる人間だったら、

ここまで俺のことを必死で助けに来てくれる親友というものが、俺にもできたんだろうか――――――――
里中を追って赤い重厚なドアを押し開くと、そこには探していた天城、ではなく、里中が里中自身のシャドウと対峙しているところだった。
『今まで通り、見て見ないフリでアタシ押さえつけるんだ―――』
「黙れっ!!あんたなんかっ・・・・・!」
「里中っ!!」
「あんたなんか!!あたしじゃない!!!」
花村のときと同じだ。
この言葉で枷が外れたように、あの金色の眼をしたもう一人の自分は大きな化け物になる。待ったなしで繰り出された里中のシャドウの攻撃に、俺たちを庇った花村はペルソナごと吹っ飛ばされ、その衝撃で倒れこみそうになった花村は奴の大きな鞭で首を掴まれ、動きを完全に押さえつけられてしまった。
まずい、里中は丸腰だし、敵の数も多すぎる。うかつには動けない。
そう悩んでいる間にも状況は悪化するばかりで、里中は自身のシャドウに益々容赦ない追い打ちをかけられていく。
『まだいたの?さっさと消えちゃってよ。あとはアタシが雪子の面倒を見てやるからさ。踏み台としてね。』
「踏み・・・台・・・・?」
『一人じゃ何もできないのは、本当はアタシ・・・・どうしようもないアタシ・・・・』
『でも、あの才色兼備の雪子に頼られてる。”だから”雪子は友達。手放せない。』
「そんな!あ、アタシは・・・!」
自分の中、奥深くにある黒い部分。見たくない部分。
そんなところを揺さぶられ、見る見るうちに絶望に変わっていくその表情は、いつもはつらつとしている里中のものとは思えないほど苦しそうで――――――
里中、落ち着け。そんなのが君の全てなんかじゃない。
少なくとも、転校初日、迷わず俺に助け船を出してくれた君を、俺はそんな風に思わない。
花村だってわかってる。
だからこそ、俺も花村も力になりたいんだ。
親友への嫉妬、妬み。それが君の本音だとしても――――
「ホンネ?けっこうじゃねえか。」
「それでも、里中と天城は、かけがえのない友達。なんだろ?」
俺たちの声が聞こえるよな、里中?
あのシャドウの言う嫉妬や妬みは、君が抱えているものに違いない。
でも、そんな心は誰にだってあるものだ。君なら―――
「そう――――そうだよ。」
君なら、そんなところも全部受け止めて、前へ進めるはずだ。
人に手を差し伸べられずにはいられない、優しい里中なら。
「アタシたち、友達だよね―――雪子!」
吹っ切れたように里中が見せてくれた笑顔で、俺たちにも希望が見えた気がした。
でも、
『ふざけないでよ・・・・!あんた、アタシを認めて、受け入れようっていうの!?』
暴走するシャドウを言葉だけで収めることはやはり難しい。
里中の言葉へ反発するように、里中のシャドウは荒々しく今度は俺ごとイザナギを吹き飛ばし、花村の首を掴む鞭にさらに力をこめる。
花村の声にならない悲鳴が響いて、里中は泣きそうな声で花村の名前を呼んだ。
どうすればいい・・・・!?
俺を受け入れてくれた里中を助けたい。
里中を助けに来た花村を守りたい。
力が、二人を助けられる力がほしい――――!!
その時、
俺とシャドウの間に強い風が吹き、お互いの視界が一瞬、遮られた。
その強い風に思わず目を瞑った、その瞬間だった。

―――――あなたは絆によって、新たなアルカナを手に入れました――――――
「!?マーガレット・・・と・・・・きみは・・・!??」
――――”ワイルド”・・・複数のペルソナを操れる力・・・・選ばれし者――――

ベルベットルームのマーガレットの声とともに聞こえたもう一人の声。
同時に、俺の右手に絡まる誰かの手の感触。
驚きに目を開くと、俺の目の前には一人の女の子が跪いて俺の右手を握っていた。

「――――あなたなら、きっと―――――」
俺の目を見て彼女はそう囁く。

重なった右手に新しい力を感じ、俺は心のまま応えた。

「――――チェンジ――――、ジャックランタン!!!」