How to go 10

「おにいちゃんのおともだちって、みんな優しくってきれいだね!」
5月3日、連休初日の夜。ジュネスから帰った菜々子は、興奮冷めやらぬ感じでそう話す。里中が今日、俺と一緒に菜々子をジュネスに連れ出してくれて本当によかったと、心から思った。

ゴールデンウィーク。世間では一家団欒・外出のチャンスと言わんばかりの雰囲気が漂う時期だが、菜々子の父親は残念ながら刑事という職業柄、今日も休み返上で働いている。
『せっかくの連休だ、どこか行こう』
つい数日前にそんな話を菜々子としていただけに、菜々子はもちろん、仕事とは言え、奈々子との約束を破ることになってしまった堂島さんも辛いところだろう。
境遇は違えど、親になかなかかまってもらえない寂しさは俺もよくわかる。この歳になるとさすがにもう割り切れもするが、小学生の菜々子にはまだ難しいことだろう。だからこそ今日、菜々子を一人っきりにさせずにすんで、そして、菜々子自身も楽しかった様子で心底ホッとしている。

「きれいっていうのは、陽介も含まれてるの?」笑いながら茶化してみる。
「ん〜陽介おにいちゃんはー、おもしろいひと!ジュネスって、陽介おにいちゃんのおうちなんだよね?いいなぁ〜、毎日ジュネスにいられるんだ〜!」
勤労少年と化している陽介には、なんとも複雑な感想だろうな。どんな反応するかな、今度話したとき伝えてみよう。
「きれいだったのはね、女のひとみんな!特にね、あのね」
「うん?」
名前おねえちゃん・・・・がね、すごく、きれいだなって・・・・」
「・・・・名前おねえちゃんって、ビフテキを持ってきてくれた、あのお姉さんのこと?」
「そう!」

苗字名前、それはマヨナカテレビで俺に新しい力をくれた、あの子のことだ。


『 連 れ て 行 っ て 』


俺たちと同じく、今回の怪奇事件の真犯人を探しているという彼女は、自らヒトではないと明言している。しかし、その見た目はどこからどう見ても人間そのもので、当たり前のように学校に来たりジュネスでバイトをしていたりする。
今日も例外ではなく、あのフードコートで涼しい顔をして働いていた彼女は、陽介と一緒に、俺たちの席まで料理を運んできた。といっても、そのまま休憩時間と言って俺たちに合流した花村とは違い、彼女は二言三言、菜々子と名前を教えあって、そのまますぐ仕事に戻っていってしまったから、菜々子が苗字と話せた時間はわずかなものだったはずだが、それでも菜々子の記憶にはしっかりと印象付いたようだ。
まあ、苗字のように容姿端麗な人物というのは、往々にして年齢も性別も超えて相手に強く印象を残すことは、俺も経験からわかる。
そして彼女の場合、その見た目に加え、俺との出会いがしらでのあの突飛な会話やこの間のバスケの活躍など、彼女のやることなすこと全てが強烈な印象ばかり与えてくるものだから、彼女の一挙一動にますます注目せざるをえない日々だ。
学校への転入もバイトへの応募も、彼女がどう行ったのかはまったく謎だが、なるほど、あの超人ぶりはたしかに、人外のものかもしれない…などと妙にすんなり、彼女のとんでもない発言すら受け入れてしまっている。


「そっか、名前おねえさんは確かにきれいだよな」
「そ、それにね・・・あのね・・・」


名前おねえちゃん・・・・おかあさんに似てるって、思ったの・・・・」


とっさに言葉が出なかった。
俺と違って、菜々子の母親は他界している。しかも、そんなに昔の話では無いらしい。菜々子ほどのしっかり者でも、やっぱり母親が恋しいんだよな。当たり前だけど・・・・

俺は菜々子の母親の顔を知らない。だから単純に、苗字の顔立ちが菜々子の母親に似ているんだろうと思った。


そう、それだけだと思っていたんだ。